テニスのグランドスラム(四大大会)の1つである、全米オープンの女子シングルス決勝で、大坂なおみ選手が2年ぶり2回目の優勝を果たしました。決勝の相手はベラルーシのビクトリア・アザレンカ選手。2対1のフルセット(1-6 6-3 6-3)での逆転優勝でした。
22歳の大坂なおみ選手。前回優勝した2018年の全米オープンでは、「女王」セリーナ・ウィリアムズ選手を破る快挙を達成しましたが、観客の主審に対するブーイングなど、さまざまなドラマがありました。
今年の全米オープンは、コロナウイルスの影響で無観客開催となり、現地時間12日の女子シングルス決勝も静寂のなかで行われました。無観客のなかでも、それぞれ元世界1位同士である大坂選手とアザレンカ選手は熱戦を繰り広げました。
大坂が選手がグランドスラムのタイトルを手にするのは3回目。一方、アザレンカ選手が全米オープンのタイトルを逃すのは3度目です。アザレンカ選手は2012年と2013年の全米オープンでも決勝で敗れ2位となっています。
全豪オープンで2度優勝したことのあるアザレンカ選手と、大坂選手が決勝で対戦するのはこの2週間で2度目となりました。両選手は全米オープンの直前に開催されるテニストーナメント、ウェスタン・アンド・サザン・オープンの決勝戦で対戦予定でしたが、大坂選手が太もものけがを理由に試合を棄権しています。
大坂選手は全米オープンの表彰式でアザレンカ選手に対し、笑顔でこう話しかけています。
「あなたとはこれ以上決勝戦で戦いたくないです(中略)。(決勝戦は)本当に私にとって厳しい試合でした」
「そしてもちろん(決勝戦をアザレンカ選手と戦うことは)本当に私を奮い立たせるものでした。若い頃に、あなたがここでプレーするのを見ていました。ですからあなたと対戦できるということだけでも私にとって素晴らしいことで、多くを学ばせてもらいました」
大坂選手は過去2週間に出場した試合のすべてに、米国で警察官らの行為によって命を落とした黒人の犠牲者の名前が書かれたマスクを着用して登場し、人種差別に対する抗議を示し続けました。
全米オープンの決勝で着用していたマスクには、2014年に警察によって射殺された12歳の黒人少年、タミル・ライスさんの名前が書かれていました。ライスさんは当時公園でおもちゃの銃で遊んでいたところを、通報を受けて現場に駆けつけた警察官に撃たれ、亡くなりました。大坂選手は7枚のマスクを用意して全米オープンの会場となるニューヨークに到着しました。1回戦から着用してきたそれぞれのマスクには米国で警察官らの行為によって命を落とした黒人の犠牲者の名前が記されています。ブレオナ・テイラーさん、イライジャ・マッケインさん、トレイボン・マーティンさん、 アマッド・アーバリーさん、ジョージ・フロイドさん、そしてフィランド・キャスティルさんです。
Naomi Osaka wears a mask bearing the name of Tamir Rice. Source: AP
マスクを着用したことについて大坂選手は、人々がこの問題について話し合うきっかけになればと語っています。
3週間前には米ウィスコンシン州ケノーシャで、黒人男性のジャイコブ・ブレイクさんが警察官によって撃たれる事件があり、「ブラックライブスマター」の運動の続く米国に新たな衝撃を与えました。
大坂選手は当時、この銃撃事件をはじめ一連の人種差別への抗議として、ウェスタン・アンド・サザン・オープンの準優勝を棄権すると発表しました。ウェスタン・アンド・サザン・オープンの大会運営者は抗議活動の行われる日に予定されていたすべての試合を24時間延期することを決め、大坂選手を棄権を撤回するよう説得。大坂選手はこれに応じています。
全米オープンの決勝。アザレンカ選手は、準決勝でウィリアムズ選手を破った勢いをそのままに、第一セットをほぼ完璧なプレーで奪いました。しかし、大坂選手は自分の落ち着きを失いませんでした。
女子シングルス決勝で、第一セットを落とした選手が逆転優勝を飾るのは、1994年のアランチャ・サンチェス・ビカリオ選手以来となります。