連邦政府のアラン・タッジ移民相代理はオーストラリア市民権の日となる17日、市民権テストの内容を更新したことを明らかにしました。
タッジ移民相代理は声明で「オーストラリアの価値観(Australian values)は重要です。オーストラリアという国を形作る上でその役割を果たし、これだけ多くの人がオーストラリア市民になりたいと考える理由でもあります」と語りました。オーストラリアの価値観に重点を置いた更新となっています。
11月15日以降に実施される市民権テストには、新しい質問が盛り込まれます。タッジ移民相代理は声明で、「将来の市民に対して、言論の自由や相互尊重、機会の平等、そして民主主義や法の支配の重要性など、私たちの価値観を理解しそれを守ることが求められるということを理解してもらう必要があります」と述べています。
新しい質問とは?
11月15日以降の新テストでは、複数の選択肢から答えを選ぶ質問が20個用意されています。このうち5個がオーストラリアの価値観についての質問です。市民権テストに合格するには、オーストラリアの価値観についての質問5個ですべて正解し、スコアが全体で75%以上に達していなければなりません。テストは英語で行われます。
また市民権テストでの英語能力や居住条件については、今回変更がありません。
オーストラリアの価値観についての新しい質問例です:
- Why is it important that all Australian citizens vote to elect the state and federal parliament?
- Should people in Australia make an effort to learn English?
- In Australia, can you encourage violence against a person or group of people if you have been insulted?
- Should people tolerate one another where they find that they disagree?
- In Australia, are people free to choose who they marry or not marry?
- In Australia, is it acceptable for a husband to be violent towards his wife if she has disobeyed or disrespected him?
- Do you agree that men and women should be provided equality of opportunity when pursuing their goals and interests?
- Should people’s freedom of speech and freedom of expression be respected in Australia?
これらの質問がテストでこのまま出題されるわけではなく、回答は複数の選択肢から選びます。
新しい市民権テストを受ける予定のある人は、テストについて内務省による新たな資料「」がオンラインで公開されています。日本語版は。
市民権取得の体験談
インドで生まれたエドワード・クイン氏は、アブダビで育ち、大学で機械工学を学びました。そしてオーストラリアで修士課程の勉強を続けることを決めました。
ブリスベンに住むクイン氏はSBS Newsに対し、「最初は勉強するために(オーストラリアに)来ました。その後のことは考えていませんでした」と語りました。
しかし、自分の専門分野での修士号などでオーストラリアへの技能移民として十分なポイント数を得られることを知り、永住権と市民権を視野にオーストラリアでの将来を真剣に考え始めたといいます。
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Mr Quinn is thrilled to be an Australian citizen. Source: Supplied
クイン氏の永住権が認められたのは、申請からわずか4カ月のことでした。しかし市民権が認められるまでには時間がかかりました。市民権が認められるまでの間クイン氏は、知的財産法で別の修正号を取得しました。市民権が認められたのはオーストラリアに来てから4年がたったときでした。
「(市民権を認めるという)メールを受け取って安心しました。この一連のプロセスが終わることを知り、ほっとしました。もう移民エージェントや弁護士などとのやり取りをしなくてもいいからです」とクイン氏は語りました。
クイン氏が宣誓してオーストラリア市民となったのは、2018年1月26日のことでした。その日のことは忘れられないそうです。
「信じられないくらい幸せで自信に満ちていました。式典の後に思ったのは、私に向かって『自分の国に帰れ』と言う人に対して、今や彼らに対して『私の国はここです。私はオーストラリア人です』と言える、毅然と対応できるのだということです」
「オーストラリアは国ですが、私はオーストラリアが自分を助けてくれた『人』であるかのように感じます。とても感謝しています」とクイン氏は語りました。
市民権と永住権との違いは?
一般的に永住権保持者は、オーストラリアで永久的に生活し、働き、勉強することができます。しかしオーストラリアのパスポートを取得することはできません。
また永住権保持者は、自動的にオーストラリアに入国できる権利を持っていないので、永住者としてオーストラリアに入国する際には、有効な永住ビザを持っていることが必要です。
その一方で市民権保持者は、オーストラリアからの出入国に制限はありません。
市民権保持者はまた、連邦、州・テリトリーで行われる選挙、憲法をめぐる国民投票やほかの国民投票に票を投じることができます。市民権保持者は選挙に出馬できる被選挙権があり、オーストラリア国外で生まれた自分の子どもをオーストラリア市民として登録することができます。
市民権保持者はオーストラリア国外で問題が発生したときに、その国や地域にあるオーストラリアの大使館や総領事館に助けを求めることができます。
市民権を取得する人は毎年何人?
1949年にオーストラリアの市民権制度が導入されてからこれまでに、500万人以上が市民権を取得しました。過去5年間では68万6,000人以上に市民権が認められており、昨年度(2019ー2020)には過去最高の20万4,000人がオーストラリア市民になりました。
市民権を取得した人の出身国の上位5カ国は、インド、英国、中国、フィリピン、パキスタンとなっています。
一方、市民権の承認プロセスは需要に追いついていません。未処理分の申請がたまっており、8月31の時点で、内務省の管理下にある通常の市民権申請件数は15万9,846件となっています。このうち75%について判断が下されるまでの時間は15カ月、90%では28カ月となっています。
COVID-19による影響は?
連邦内務省は、COVID-19のパンデミックの間も市民権申請の処理プロセスを続けているとしています。
これまでの数カ月間は、対面での市民権取得に向けた面会やテストなどが中断されていましたが、現在ではメルボルンを除き、すべての会場で再開されています。
パンデミックにより、市民権の授与式は今年中断され、3月末からはオンラインで行われています。対面での式典も6月から一部で再開されています。今後もCOVIDセーフの安全措置を講じることが難しい場合は、式典はオンラインで行われる見込みです。