Key Points
- オーストラリアでは、10月31日から男女の2023年IFCPFアジア・オセアニア選手権(パラアジアカップ)が開催される
- パラスポーツは、障がい者にとって素晴らしいツールになり得る
- パラルースとパラマチルダスは、『人生においてもピッチにおいても無敗であること』をモットーにプレーしている
女子サッカーワールドカップの共催国として大成功を収めたオーストラリアで、今月末からまたメジャーなサッカーの大会が開催されます。
2023IFCPFアジア・オセアニア選手権(パラアジアカップ)は、脳性麻痺や後天性脳損傷、脳卒中による症状を持つアスリート向けに改良された脳性麻痺サッカー(CPサッカー)の大会です。
この7人制サッカーは1984年の夏季パラリンピックでデビューを飾りましたが、2020年の東京大会ではプログラムから外されています。
パラアジアカップはCPサッカーが注目されるチャンスですであるため、斎藤ゴウキさんのように積極的にこの競技に参加している選手たちは期待を寄せています。
「CPサッカーはあまり知られていません。ですから、CPサッカーの試合を観戦してもらえることは、僕らにとって大きな意味があるんです」
Sydney-based CP footballer Goki Saito. Credit: Supplied
自分の居場所
2歳のときにに来豪した斎藤さんは、8歳のときに脳卒中を引き起こし、その後遺症で右半身に影響を受けました。
「辛い時期でした。最初の1年間は、脳卒中が何なのかもわかりませんでした。気を失いがちな普通の子供ぐらいにしか思っていませんでした」
後遺症は斎藤さんの身体だけでなく、精神にも影響を与えました。
批判されるのが怖かったんですGoki Saito
しかし、社交性を高め、体力を維持するため、友人たちとサッカーに励んでいたと説明する斎藤さん。
そんな中、CPサッカーオーストラリア代表、パラルースのブレット・フェアホール選手に声をかけられます。
「ローカルの試合に参加していた私を見つけてくれたんです。彼は私が彼と同じ障がいを持っていることに気づいたんです」
これが斉藤さんとCPサッカーとの出会いでした。
「CPサッカーというものがあることすら知りませんでした」
しかし、同じ境遇の人たちと交流する機会を得たことで、まったく新しい世界が開けたと斎藤さんは話します。
自分と似たような人たちと出かけることで、大きな自信を得ることができました。Goki Saito
「CPサッカーで自信がつき、その後CPスイミング、CPランニング、陸上競技、CPクロスカントリーも始めました。すべてCPサッカーのおかげです」
斉藤さんはその後、ニューサウスウェールズ州代表としてCPサッカーをしており、昨年はパラルースのトレーニングキャンプにも招集されました。
現在21歳の彼は、コーチとしても活躍しており、昨年からNWSスピリットFCで女子のSAP(スキル習得プログラム)チームを指導しています。
「スポーツを通じて培われた自信とスキルは、社会と地域への参加をより可能にします」
パラスポーツは、障がいを持つ人々にとって信じられないほど力強いものであり、脳性まひの若者にとって、国の代表を目指すことができるということは、力を与えてくれるものです。Rob White, CEO of Cerebral Palsy Alliance
「私たちのスポーツキャンプやセラピープログラムが、多くの才能あるパラマチルダスやパラルースたちの成長をサポートする役割を果たしたことを誇りに思います」とホワイト氏は言います。
Football camp organised by Cerebral Palsy Alliance. Credit: Cerebral Palsy Alliance
「人生において無敗であれ」
パラルースのカイ・ランマート・ヘッドコーチは、友人や家族の前でホームでプレーする機会は、オーストラリアチームにとって「とても特別な経験」になるだろうと話します。
「スタンドを満員にし、両チームに素晴らしい経験をさせたいです」
パラアジアカップが男女同時に開催されるのは今回が初めて。2022年3月に結成されたばかりのパラマチルダスにとっては、初めてのアジアカップとなります。
「これまで、CPフットボールの女子サイドがないとファミリーは成り立たないと感じていましたが、明らかに変わりました」
Head coach of the Pararoos, Kai Lammert. Credit: Liam Ayres
「人生でもピッチの上でも無敗であること」
「リアルフットボール」
小さなフィールドで、小さなゴールでプレーするCPフットサッカーは、伝統的にハイスコアが特徴で、「見ていてエキサイティングなゲーム」だとランマート監督は説明します。
「サッカーが好きな人なら誰でも、ワールドカップでサッカルースやマチルダスを見るのが好きな人なら誰でも、この競技を好きになるでしょう。リアルフットボールです」。
選手は1~3にクラス分けされ、FT1の選手が最低1人、FT3の選手が最大1人フィールド上にいることが求めらています。またオフサイドはなく、選手はボールを転がしてプレーすることが許されています。
Daniel Campbell during an international friendly against the United States of America, at Cromer Park, NSW. Credit: Supplied by Football Australia
CPサッカー選手は片方に障がいを持つ傾向があるため、協力し合い、互いに融通し合うことがカギを握ります。
「既成概念にとらわれず、創造的でなければなりません」
パラアジアカップは、10月31日から11月12日まで、メルボルンのラ・トローブ大学に新設された「マチルダスのホーム」で開催されます。
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