キリスト教最大教派、カトリック教会の最高指導者であり、信者10億人以上を束ねたフランシスコ・ローマ教皇が21日、88歳で死去しました。教皇は今年3月から肺炎の治療のため5週間入院し、退院したばかりでした。
教皇は亡くなる前日の20日のイースター(復活祭)の行事にサンピエトロ広場に専用車に乗って現れるなど、亡くなる直線まで精力的に活動しました。
フランシスコ・ローマ教皇は、教皇として50カ国以上を歴訪し、40万キロを超える距離を移動しました。カトリック教会の伝統を背負いながら、現代社会と向き合い続けました。
2019年には日本を訪問し、被爆地の広島と長崎から核兵器の廃絶を世界に訴えました。
フランシスコ・ローマ教皇とは?
本名はホルヘ・マリオ・ベルゴリオ。1936年12月17日、アルゼンチンでイタリア系移民の息子として生まれ、21歳のときに肺炎にかかり生死をさまよう経験をしました。大学で化学の学位を取得した後、司祭になるための勉強を始めました。
33歳の誕生日を迎える数日前に司祭となり、1998年に故郷ブエノスアイレスの大司教になりました。

Cardinal Jorge Bergoglio became Pope Francis in 2013 Source: Getty / LatinContent
初めてのアメリカ大陸出身者かつイエズス会出身のカトリック指導者として、すぐに「民衆の教皇」と呼ばれるようになりました。
どんな教皇だったのか?
バチカンのスポークスマン、トーマス・ロシカ神父は、フランシスコ教皇が選ばれたこの決定は支持を受けていたと語ります。
「つながりはすぐにできました。教皇は、自分がローマ教区と呼ぶ自分の教区でつながりをつくりました。人々に自分から会いに出かけ、それは美しい関係がありました。彼は慣例に従わずにマイクを握って語りかけました。神に感謝します」(ロシカ神父)。
しかし民衆の教皇は、早速困難に直面することになります。
その最たるものは、教会における子どもへの性的虐待でした。一連のスキャンダルに対応し、犯罪を取り巻く「沈黙のベール」を取り除くことでした。
教皇自身も2018年、神父による性的虐待を隠蔽したとして告発されたチリのフアン・バロス司教を擁護し、また被害者の申し立てを「中傷」だと切り捨てたことで、厳しい批判にさらされました。
カトリック教会、そしてフランシスコ教皇への怒りが広がりました。
聖職者から虐待を受けた被害者のジェームズ・ハミルトン氏は当時、次のように語っています。
「ローマ教皇が今日行ったことは、不快で痛みを伴うものです。私たちにとってだけではありません。カトリック教会のような場をより虐待の少ない、より倫理に則った場所にしようと闘っているすべての人々にとってです」。
教皇はその年、自分が重大な判断ミスを犯したと謝罪しました。

Brazil has the highest number of Catholics of any country
フランシスコ教皇が行った改革とは?
教皇は、ここ数十年で最も規模の大きな教会改革を実行しました。教会法のもとで神父によるグルーミング(性的な目的のために子どもなどに優しくして信頼関係を築く行為)を犯罪とし、長らく性的虐待を当局に通報する妨げとなっていた聖職者の秘密保持義務を廃止しました。
教皇はこう語っています。「虐待スキャンダルの深刻さが、多くの人々が犯した失敗に光を当てたことで、未成年者や社会的弱者を社会全体で保護することの重要性が強く示されることになればと願っています」。
セクシュアリティ(性のあり方)もまた、時代を決定づける問題となりました。
教皇は2016年、カトリック教会は同性愛者に謝罪すべきだと記者団に語っています。
そして2020年、教皇は再びカトリック教会と袂を分かちます。自身の人生を追ったドキュメンタリーの中で、同性パートナーシップを法的に認めるシビル・ユニオンを支持すると明言しました。
後にバチカンは、司祭たちはそのようなつながりを祝福することは許されていないとして、カトリック教会の立場をあらためて説明しています。
教皇はさらに南スーダンを訪問した後、地球上で最も新しい国が同性愛を犯罪化していると非難しました。
これは正しいことではない。同性愛的な傾向を持つ人たちは神の子であり、神は彼らを愛している
教会内部からの保守的な反対に直面しながらも、多くの人が教皇を進歩的だと賞賛しました。
一方でまた、フランシスコ教皇は教会の最も古い伝統の一つである「他者への配慮」を取り戻しただけだと言う人もいます。
教皇は、歴史的に敬遠されてきた離婚したカトリック信者を受け入れるよう教会に呼びかけ、また富の不平等について積極的に遠慮なく発言しました。
長年にわたって難民や移民を支援し、2月中旬には米国のトランプ政権による不法移民の大量強制送還を批判する内容の書簡を米国の司教たちに送っています。
そしてフランシスコ教皇が情熱を傾けたものの一つに環境問題があります。人間による環境破壊は神に対する罪であると批判しました。
教皇はこう語っています。「勇気と正義を持って行動し、常に人々に真実を伝えてほしいと、世界の指導者全員に訴えたいと思います。そうすることで人々が地球の破壊から自分自身を守る方法を知ることができるように、そして、私たち自身がしばしば引き起こしてしまう破壊から地球を守る方法を知ることができるように」。

Pope Francis met with some Israeli hostages who were kidnapped by Hamas in the October 7 attacks. Source: EPA / Vatican Media handout
イスラエルの人質の家族に会い、ガザで唯一のカトリック小教区で毎日話をしたことを明かしています。
一般市民とのセルフィーに応じ、一般市民からの手紙や電話に自ら返信し、受刑者の足を洗うために刑務所を訪問することもありました。司教とは世界で一番重要な存在なのではなく、最も偉大な奉仕者でなけれなならないという考えを語っていました。
フランシスコ教皇は、教会の運営体制に挑戦することを恐れない教皇だったようです。教皇が行った努力は、世界最古の組織の一つを、より包括的な場所にしようとする取り組みでした。
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