中国在住のデザイナー、イスラム・ヌーア氏は、自身のアート作品をAIを使って制作しています。ソーシャルメディアのフォロワー数は5万人を超えます。
最近のヌーア氏の作品は、現在も続く中東ガザ紛争に焦点が当てられています。同氏は SBS Examines に対してこう語りました。
「私の目的は、人に影響を与えたいというよりも、自分の思いを表現しガザの苦しみに光を当てることにあります。」
「痛みを美化したり、その存在を最小限に抑えてしまわないよう常に気をつけています。その痛みをできる限り説明しようとしています」。
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SBS Examines: ミスインフォメーションとディスインフォメーション
SBS Japanese
17/09/202406:05
ヌーア氏による画像作品の多くは、AIで生成されたものであることが明記されないままソーシャルメディアでリポストされ、物議を醸しています。
広く拡散されたものの1つに、ガザ地区最大となるアルシファ病院の院長で小児科医の、モハメド・アブ・セルミア医師の解放を「描いた」AI画像があります。
このAI画像は、医師の解放を批判するものや医師の復帰を歓迎するものなど、内容が全く異なる主張とともに用いられました。
ヌーア氏の別の作品では、軍事作戦の最中に犬が高齢の女性に飛び掛かるものがあります。これはソーシャルメディアでユーザー100万人以上に拡散されました。
Islam Nour's AI-generated artwork which has recently gone viral. Credit: @in.visualart
「AIが生成した画像はそれがどれほどディープで、力強く、表現に優れていたとしても、ガザから私たちに送られる悲惨な画像と肩を並べることはできません」。
ヌーア氏はまた、アーティストとしての自分の責任を理解し、「嘘をつかない、出来事をねつ造しないという倫理的義務」が自分にはあると言います。
このことから、ヌーア氏はしばしば自身のAI作品を、一般の人が撮影した本物の画像やビデオを添えて投稿しています。
「本物の画像や映像を投稿することが必要です」(ヌーア氏)。
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ミスインフォメーションにつながる可能性
オーストラリア人のフォトジャーナリスト、アンドリュー・クイルティー(Andrew Quilty)氏は9年間、アフガニスタンで生活し、働いていました。
一瞬を切り取るような伝統的なフォトジャーナリズムは、より根拠のある視点を持つとクイルティー氏は考えています。
「現場を記録することが、一段の理解につながります」(クイルティー氏)。
クイルティー氏は、戦争や紛争に関する画像をAIで生成することは、危険な領域だと語ります。それはまるで、「戦争という深刻な出来事を、ディズニーの漫画家を使って描き出すことだ」と言います。
A self-portrait of Australian photojournalist Andrew Quilty during his time working and living in the Middle East. Credit: Andrew Quilty
「フォトグラファーの仕事は良い評判があってこそ成り立ちます。その一方で、ソーシャルメディアで自分の主張に裏付けるような画像を生成して投稿することを思いとどまらせるようなものはありません。」
クイルティー氏はその一方で、プロのフォトジャーナリストが撮影したものであっても、完全な客観性を持つ写真はないと考えています。
「紛争地帯での撮影では、バイアスやミスインフォメーションにつながる可能性を否定できません」(クイルティー氏)。
AI使用の倫理
シドニー工科大学でビジュアルコミュニケーションを教えるケリーン・ファード(Cherine Fahd)准教授は、客観性を保つということは簡単ではないと語ります。
「写真は真の姿を写す、という考えはフィクションです。写真はあくまでも、一人の個人の視点が捉えたある一瞬を切り取ったものだからです。」
ファード准教授はまた、AIが生成した画像には、治療的な有効性を期待できるとも続けます。
「AIは人を騙すために使われることもありますが、悲しみから立ち上がる助けにもなります」(ファード准教授)。
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AIが進化を続けるなかで、その影響にまつわる議論も行われています。
これまでの考え方では、AIが生成した画像は写真ではありませんが、その基となっているのは写真です。
ファード准教授はAIを脅威であるとは見ていません。
「AIが私たちの生活を滅茶苦茶にする、という考え方には賛成できません。」
「重要なのは、テクノロジーが何ができるのかを私たちが知っていることです」(ファード准教授)。
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