エルニーニョとラニーニャ現象は、地球の気候システムの自然現象であります。
ハイライト
- エルニーニョ現象、ラニーニャ現象とは?ニュートラルとは?
- エルニーニョ・南方振動(ENSO)は海洋と大気の相互作用による現象
- インド洋ダイポールモードと南半球環状モードも気候変動の重要な要因
エルニーニョとラニーニャは、「エルニーニョ・南方振動(ENSO)」として知られる自然サイクルの一部です。
南クイーンズランド大学気候科学センター所長のスコット・パワー教授によると、エルニーニョ・南方振動(ENSO)は、3つの異なるフェーズ、「エルニーニョ」、「ラニーニャ」、「ニュートラル」からなる気候システムで、自然に起こる振動に対して科学者が与えた用語です。
ENSOは海洋と大気の相互作用(カップリング)現象であるため、エルニーニョとラニーニャの相反する2つのフェーズは、それぞれ海洋と大気における一定の変化を必要とします。一方、「ニュートラル」とは、エルニーニョとラニーニャ現象がない、中立の状態を指します。

Pacific Ocean – even in neutral state the Western Pacific is warm. Source: Reproduced with the permission of the Bureau of Meteorology.
エルニーニョ現象、ラニーニャ現象
ラニーニャ現象は、通常、オーストラリアの大部分、特に東部および北部の内陸部で平均より多い降雨を伴い、時には洪水を引き起こします。
一方でエルニーニョは、通常、オーストラリア北部および東部で降雨量が減少することに関連しています。
モナッシュ大学の地球大気環境学部の助教授でもあるパワー氏は、エルニーニョは太平洋とその上空の大気が数シーズンにわたって中立の「平常」の状態から変化するときに発生すると説明します。
エルニーニョの期間中は、中部太平洋と東部太平洋で海水が暖かくなり、オーストラリアの北と東南アジアの近海では少し冷える傾向があります
「このような海洋の変化は、上空の大気にも大きな影響を与えます。貿易風は弱くなり、対流や降雨は東南アジアやオーストラリア北部から東に移動する傾向があります。そのため、オーストラリア北部と東南アジアは乾燥し、東部は湿潤になる傾向があります」

During an El Niño event, trade winds weaken, allowing the area of warmer than normal water to move into the central and eastern tropical Pacific Ocean. Source: Reproduced with the permission of the Bureau of Meteorology.
ラニーニャは、ENSOにおけるエルニーニョと逆の現象
「私たちが現在置かれているラニーニャはその逆で、オーストラリア北部や東南アジアの海域が暖かくなる傾向があり、多くの雨を引き寄せるので、雨量が多くなる傾向があります」とパワー教授は説明します。
「そして、海水が暖まると、海面が上昇し始めます。そのためラニーニャの時期には、より多くの雨が降り、海面が上昇し、気温がより穏やかになる傾向があります」と付け加えます。
「ニュートラル」は、赤道太平洋の海面水温が平年並みであることを指し、ENSO連続体の中間に位置します。
しかし、海がエルニーニョやラニーニャの状態にあるように見えても、大気が反応していない場合もあり、またその逆もあります。

During a La Niña event, the Walker Circulation intensifies with greater convection over the western Pacific and stronger trade winds. Source: Reproduced with the permission of the Bureau of Meteorology
「非常に不規則な振動」
パワー教授は、この振動は非常に不規則なものだと話します。
今年はエルニーニョが発生し、来年はラニーニャが発生するかもしれませんし、ニュートラルな年かもしれません。そしてまたラニーニャが発生するかもしれない
つまり、振動はあるフェーズから別のフェーズへと非常に不規則に変化し、それぞれのフェーズは平均して約12ヵ月間続く傾向があります。
しかし発生するのは、3つのフェーズのいずれかのひとつです。
「約半分は現象がないニュートラル、約4分の1はラニーニャ現象、残りの4分の1はエルニーニョ現象になります」
ENSO 指標
気象局は、以下のような ENSO 指標を監視し、報告しています。
- 短期的な熱帯性降雨の活発化
- 海面および水深の水温
- 海洋熱量-海洋に蓄積されたエネルギー量を測定
- 大気圧
- 曇り度-熱帯地域の雲の量を測定
- 貿易風と大気圏上層の風の強さ
- 海流
これらの気候指標は、現在のENSOの状態に関する情報を気候モデルに提供し、数カ月先の状態を予測するため利用されます。

Source: Getty Images/Andrew Merry
では、南方振動指標とは?
気象局の気候モニタリングチームのシニア気候学者リネット・ベティオ博士によると、南方振動指標はタヒチとダーウィンの間の地表気圧の差を測定するものだと言います。
南方振動指標は、実はエルニーニョやラニーニャ現象の大気的な部分なのです
「南方振動が高いプラス値、またはマイナス値であるとき、エルニーニョとラニーニャのフェーズと実際に重なり、オーストラリアの降雨に影響を与えることがわかりました」と彼女は説明します。
インド洋ダイポールモード
2019年にオーストラリア各地で発生したブッシュファイヤーでは、もうひとつの現象、インド洋ダイポールの影響もありました。
ニューサウスウェールズ大学気候変動研究センターのシニア研究員で、CSIROのアシスタント・リーダーであるアグス・サントソ氏によると、インド洋ダイポールがマイナスになると、雨が多くなるそうです。
インド洋ダイポールはENSOに似た気候現象ですが、インド洋側で発生します
「そしてインド洋ダイポールがプラスになると、インド洋の東側(オーストラリアの西側)とインドネシアの海面水温が通常より低くなり、これによりオーストラリア南東部が乾燥した状態になる」とサントソ氏は説明します。
南半球環状モード
南半球環状モードは、オーストラリア、特に南オーストラリアの降水量変動のもう一つの重要な因子で、南極振動とも呼ばれます。
南半球環状モードは、タスマニアなどのオーストラリア南部で発生する暴風雨など、南氷洋の風の位置をコントロールする大気の状態です
「南半球環状モードがプラスの間は、貿易風が南下するため、オーストラリア南部は乾燥する傾向にありますが、一方でオーストラリア東部から吹く風は多くなります」とサントソ氏は説明します。
この風は湿気をもたらし、雨を降らせることができますが、これがラニーニャ現象に加わると、より激しい雨が降るようになります。
気候変動
パワー教授は、これら気候因子と気候変動はともに考慮する必要があると言います。
何が起こっているかを理解するためには、自然変動だけでなく、気候変動がこれらすべての気候変数に与えている影響も考慮する必要があります
エルニーニョ・南方振動のような自然変動に加えて、人為的な気候変動がこれらの気象現象に影響を与え、オーストラリアを含む地球全体の長期的な温暖化と海水面の上昇を引き起こしていると、教授は言います。
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