1年の延期、コロナ禍の開催、無観客観戦など、前代未聞といえる東京オリンピック。大会の成功には欠かせないボランティアは、国際オリンピック委員会のバッハ会長が開会式で述べたように、「日本のアンバサダー」でもあります。
東京五輪組織委員会によると、競技会場などで活動する大会ボランティア約8万人のうち、約1万人が大会を前に辞退しており、また海外在住の一般観客の受け入れが断念されたことにより、多くの海外ボランティアも活動の場を失いました。
大会前の調査では、日本国民の8割が大会の延期や中止を望んでおり、この状況下で活動を決断したボランティアの多くは、家族を説得して、活動に臨んでいます。
「家族から大反対されました。なぜ、わざわざ人が多いところに、感染するようなところに飛び込んでいくのか」と、初めは家族の理解を得られなかったという山田香代さん。
ロンドン五輪で見たボランティアの活き活きした顔に惹かれ、参加を決めた山田さんは、大会前にワクチン接種を終えるということを条件に、家族の承諾を得ました。

Kayo Yamada believes if any country can pull off an Olympic in this situation, it is Japan. Source: Kayo Yamada
コロナに対する不安はボランティアの誰にもありましたが、自国開催のオリンピックという一生に一度ともいえる大会を逃せないという思いがありました。
「右手にコロナにかかるリスクをおいて、左手に一生に一度の経験をおいて天秤にかけ、後者を選びました」(庄司 真由美さん)
「人種、性別、年代関係なく、いろんな人が集まってなにかを成し遂げるというところに魅力を感じ、自分の力を出したいと思いました」(大参義卓さん)

Mayumi Shouji, wants to show the world, that Japan ins doing well! Source: Mayumi Shoji
しかしながら、「コロナのストレスが、オリンピックに向けられている」と語る山田さんは、ユニフォームを着て、街なかを歩くのも怖い、と語ります。
「堂々として、ボランティアユニフォームを着て歩きたかったのに、上着を着て隠さないといけない現実が悲しいです」
しかし、「コロナ禍だからこそ、逆に日本人だから成功できるんではないか」と、強く思うようになったという山田さん。
「私たちボランティアは3年かけて準備をし、取り組んできたので、なんとか最後まで成功させたい」、「観客にはおもてなしができなくなってしまったけど、選手や関係者に対しては精一杯のおもてなしをしたい」と涙ながらに語ります。
関係者のドライバーとして活動する日髙正人さんも、「来てくださった選手や関係者が、コロナが落ち着いたらまた日本に来たいと思えるよう、最低限のおもてなしを心がけています」と述べています。

Masato Hidaka, is doing the best "Omotenashi" , so visitors would want to come back Source: Masato Hidaka
「私たちの街の魅力」を伝えたい バーチャルツアー開催
今回取材にご協力いただいたボランティアのように、選手や関係者に携わる活動は予定どおり行われている一方で、観客サポートや都市ボランティアなどを予定していた多くの人が、その活動の場を失ってしまいました。
そんななか、日本財団ボランティアサポートセンターは、Airbnbジャパンと協力して、89人の地元のボランティアがホストを務めるを7月30日から実施します。
これらの無料エクスペリエンスは、日本各地のオリンピック会場、その開催都市の魅力、観光スポットなどを紹介するもので、東日本大震災からの復興に向けて歩む被災地の姿も含まれます。

You can now see and feel the Olympic atmosphere at each of the hosting cites. Source: The Nippon Foundation Volunteer Support Centre
東京2020にこれなくなってしまった人に、大会や地域の雰囲気をオンラインで伝えることで、コロナが収束したとき、「日本に行きたい」、そう思ってもらえるような企画を心がけていると、プロジェクト・コーディネーターの日向野美峯さんは語ります。
「開催まで、困難なことはたくさんありましたが、人と人とを結びつけるオンラインツールの可能性を実感しました」
都市ボランティアとして、横浜のバーチャルツアーを担当する高橋雅司さんは「オリンピックの一番の主役はアスリート」とし、選手や関係者が安心して過ごせる環境を提供できたことを、とても嬉しく思うと述べています。
2032年にはブリスベンでオリンピックが開催されます。

Masashi Takahashi, will be showcasing the city of Yokohama in the virtual tour Source: Masashi Takahashi
さらにデジタル化が進む11年後には、バーチャルツアー限らず、あらゆる可能性があると高橋さんは語ります。
「そしてたとえアクシデントが起きたとしても、めげずに色んなことを模索して、大会を盛り上げてほしいです」
LISTEN TO

「なんとか成功させたい」 東京五輪、ボランティアの思い
SBS Japanese
27/07/202112:47
火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語ラジオ!