路上で歌やダンス、アートなど、パフォーマンスを披露するバスキング。そのバスキングを20年以上に渡ってメルボルンの街で繰り広げてきたベテランバスカー、上川ジョージさん。ギターやドラム、ハーモニカ、そしてボーカルなどをすべてひとりでこなすワンマンバンドを、メルボルンにお住まいの方でしたら一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
ハイライト
- バスカーたちの協力を得てメルボルンの街を活性化させようという活動が始まっています
- キャッスレス化に伴い、バスカーたちにQRコードによるデジタルペイメントを導入
カウボーイハットをかぶった「ジャパニーズ・ブルース・カウボーイ」とも知られるジョージさんは、コロナパンデミック以前は週に3-4回バスキングを行う、バスキング界の重鎮でした。
収入はもちろん、人前でパフォーマンスすることを同時に失い、「とても厳しかった」と振り返るジョージさんは、同じような状況に立つ他のアーティストと相談するなか、「今自分ができることは新しい曲を録音し、外に発信すること」と気づき、ニューシングル「Far Lights」に取り組むことに。普段はプロに依頼するミキシングも、外出できないことを理由に、独学でチャレンジしたそうです。
しかしロックダウンがなかなか解除されないなか、周りの「多くはあきらめに入っていました」と語ります。長期に及んだロックダウンを終えたメルボルンでは今、メルボルンのアイコンでもあるバスカーたちの協力を得て、街を活性化させようという取り組みがメルボルン市とビクトリア州政府、そしてANZのパートナーシップによって始まっています。
ロックダウン中に取り組んだニューシングル「Far Lights」 Source: George Kamikawa
#LetsMelbourneAgainというイニシアティブの一環で、毎日20人のバスカーたちが指定されたロケーションでそれぞれの芸を披露し、街に人を呼び戻そうというのものです。
しかし、バスカーたちの周りに立つことができるのは、演出者を含めて常時10人まで。それを超えるとパフォーマンスを一度止めないといけないそうで、コロナ以前は100人を超える観客が立ち止まっていたジョージさんにとっては、完全復帰まではまだ時間がかかりそうです。
また感染拡大のリスクが高いとされる「ボーカリスト」は、その対策として、比較的人が少ないところに指定されているようで、ジョージさんがこれまでホームグラウンドとしてきた、メルボルン繁華街のバーク・ストリートやスワンストン・ストリートでは演奏が禁じられています。この他にも音量を通常よりも落とすことが求められてたり、演奏できる楽器の種類に制限があったりと、細かな取り決めがあります。
「ハーモニカを結構メインでやっているので、使用が完全に禁止されていることを知ったときはショックでした」
バスカーたちの状況はまだ理想的とは言えませんが、ジョージさんはメルボルン市が素早くルールを決め、場所を指定してくれたことに感謝しています。
「コロナの時期ですので、自分の判断ではやはり危険で、市がきちんとるルールを決めてくれたことで、逆にやりやすかったです」
またコロナにより、キャッスレス化が急速化するなか、メルボルン市はQRコードを導入し、バスカーたちはデジタルペイメントも受けられるようにもなりました。
インタビュー収録後に8ヵ月ぶりのバスキングに復帰したジョージさん。「4時にスタートした時は誰もいなくてとても寂しかったですが、6時以降に少し人が増えて、CDも少し売れたので、一安心しました」
8ヵ月ぶりにバスキングに復帰。しかしパンデミック以前の活気を取り戻すにはまだ時間がかかりそうです Source: George Kamikawa
10人の制限については、時折その人数を超えることがあったものの、それぞれの判断で自然に減っていったといいます。
ジョージさんも含め、バスカーたちは今後、クリスマス・フェスティバルやファッション・ウィーク、メルボルン・ミュージック・ウィーク・エクステンデッドなどのイベントでも、街の活性化のため務めるようです。
詳しくはポッドキャストをお聴きください。
LISTEN TO
豪バスカー歴20年のミュージシャン 上川ジョージさん
SBS Japanese
09/12/202011:49