“I was told at six years old ... they'd avoid me if my heart was cold.”
(6歳のときに言われたんだ ...心が冷えていたら避けられるって)
これは23歳のシェルドン・ライリーが今年のユーロビジョン・ソング・コンテストで世界に披露する楽曲、「ノット・ザ・セイム」の冒頭のリリック。それは彼のとてもパーソナルな物語を歌ったものです。
「私は幼いときに自閉症と診断されました。正式に言えば、6歳、9歳、12歳の3度に渡り、自閉症スペクトラムだと言われました」
「私は長い間、仕事をしたり、友人やパートナーをもったり、正常な機能を持つ人間として生活することはできないだろうと言われてきました」「ノット・ザ・セイム」はシェルドンが15歳の頃に書いたポエムがベースとなっています。
"I've been wanting to do Eurovision since I was a little kid. It's a dream that was the biggest, most unrealistic dream, then it comes true." Source: Sheldon Riley
「何度も自閉症と診断され、自分にできることとできないことを言われてきました。しかしあるとき、もうそんなことは気に止めず、みんなにできないと言われてきたことを、やろうと思ったんです」
そのとき書いたのが次のフレーズでした。
“The light shines bright through those who are broke inside”
(内面が壊れている人の中にも光は輝いている)
「これが曲のメインテーマです。何度心が折れても、無理だと言われても、なりたい自分になったんです」
シェルドンは17歳のときに、オーディション番組『X-ファクター・オーストラリア』のステージに、無地のシャツとジーンズというシンプルな服装で、ジョン・レジェンドの「オーディナリー・ピープル」を披露。
またその2年後には、『ザ・ヴォイス』でカルチャー・クラブの代表曲「ドゥ・ユー・リアリー・ウォント・トゥ・ハート・ミー」を熱唱しました。当時の服装は紫のジャンパーに、腕には羽が飾られており、現在のシェルドンに少し近づいているのがわかります。
当時のことをを振り返るシェルドンは、「昔の幼い自分を今の世界に連れていきたい」と話します。
「なぜなら私は今の人生を愛しているからです。一生懸命築きあげてきたこの仕事が好きだからです」
2020年に『アメリカズ・ゴット・タレント』に出演し、準々決勝まで進んだ頃には、シェルドンの代表的なステージ衣装である、クリスタルを散りばめたフェイスマスクとアバンギャルドな衣装に身を包んでいました。
しかしスポットライトを浴びるような生活には馴染むことができませんでした。
「私は公営住宅で育ちました。13の学校に通い、30以上の引っ越しを経験してきました。何一つ永続的なものはなく、確固たるものはありませんでした。唯一、不変なのは家族だけでした」。
オーストラリア生まれの母親と、フィリピンの血を引く父親は、深い信仰心を持っていたと言います。
「私は長い間、(自閉症を)治すようにと祈られていました。受け入れてもらえなかったわけではなく、いつも私を守り、私が人生から最高のものを得られるようにと願っていてくれたのです」
シェルドンの舞台衣装の準備をよく手伝うという父親は、息子が成し遂げたことを大変喜んでいると言います。「両親は今、私をとても誇りに思っています。ユーロビジョンだけでなく、私が人生でやってきたことすべてに対してです。ここまで長い旅でした」
Sheldon Riley will represent Australia in this year's Eurovision in Turin, Italy. Source: SBS / Nick Wilson
ユーロビジョンでオーストラリアの代表に選ばれたことは、音楽愛好家が彼を真剣に受け止めてくれていることの証明だと言います。
「私は単なるリアリティ番組の出演者でも、着飾るのが好きだから着飾る人でもない、ミュージシャンなのです。自分で作曲して、完全に独立しているんです」
ユーロビジョンコンテンストは、シェルドンにとってあまり身近なものでありませんでしたが、2014年に同コンテストで優勝し、「ヒゲ面の美女」として注目を集めたオーストリア代表のコンチータ・ウルストさんを見た頃から「希望」を持てるようになったと言います。
「あなたは他の人とは全然違うけど、それを受け入れてくれる人がいるんだから、それを変えないで、という小さな希望の光だったんです」
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オーストラリアは2015年からユーロビジョンに参加しており、翌年の2016年にはダミー・イムが準優勝に輝いています。
今年は2年ぶりに海外からのゲストも参加できるようになり、オーストラリアのユーロビジョンファンクラブからも多くのメンバーがトリノに応援しに行く予定です。
ユーロビジョンはSBSで視聴することができます
第66回ユーロビジョン・ソング・コンテストは、5月11日から15日までSBSとSBSオンデマンドで独占生中継されます。プライムタイムの放送は、5月13日と14日の金曜日午後8時半から、15日の日曜日は午後7時半からです。
早朝のライブ放送
セミファイナル1: 5月11日(水)5am(豪州東部標準時) SBS
セミファイナル2 : 5月13日(金)5am(AEST)SBS *シェルドン出演
グランドファイナル: 5月15日(日)5am(AEST) SBS
夜のプライムタイム放送
セミファイナル1: 5月13日(金)8:30pm SBS
セミファイナル2: 5月14日(土)8:30pm SBS *シェルドン出演
グランドファイナル : 5月15日(日)7:30pm SBS
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火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語ラジオ!