1992年、千葉県で生まれた東田直樹さんは、世界的ベストセラー『自閉症の僕が跳びはねる理由』の著者としても知られる作家です。
5歳のときに自閉症と診断された直樹さんは、会話をすることができない重度の自閉症でありながら、パソコンや、文字盤というツールを使ってコミュニケーションをとることができます。『自閉症の僕が跳びはねる理由』が世に発表された当時、直樹さんはまだ13歳。なかなか知ることができなかった自閉症の内面を伝えた作品は世界中から注目を集め、30言語以上に翻訳。昨年は映画化もされました。
Naoki when he was 5 years old Source: Miki Higashida
幼い頃から文字に強い関心があった直樹さんは、看板や商品の文字を記憶したり、お絵かきボードや空中に文字をよく描いていたと、お母さんの美紀さんは振り返ります。
直樹さんが話そうとすると消えてしまう言葉を引き出すために編み出された文字盤は、コンピューターキーボードと同じ配列のアルファベットに加え、数字、さらには、「はい」「いいえ」「取り消し」「おわり」などといったコマンドが書かれた紙のキーボード。ローマ字打ちで一文字一文字丁寧に指しながら、言葉を引き出し、コミュニケーションを取ることができます。
Naoki communicates by pointing to his cardboard-keyboard Source: SBS
この方法を取り入れるようになってから、直樹さんはとても前向きになったほか、美紀さんも、それまで疑問に思っていたことを質問できるようにもなりました。
「直樹の思いを知ることで、もっと直樹の世界を知りたい、寄り添いたいと思いました」と美紀さんは話します。
直樹さんが13歳であった2007年に出版された『自閉症の僕が跳びはねる理由』は、どうして大きな声を出すのか、なぜパニックを起こすかなど、50以上の質問に、わかりやすく応えています。今回文字盤ポインティングで取材に応じてくれた直樹さんは、自身の作品が世に発進され、映画化されたことについて、「世界の方に受け入れられたことに驚いた」と語り、今後も「僕にしか書けない作品」「他の自閉症者の力になる作品」を書いていきたいと話してくれました。
Naoki was 13 years old when he wrote "The Reason I Jump" Source: Miki Higashida
自閉症は、現在でもその原因や治療法が解明されていない障がいであると説明する美紀さん。
直樹さんが自閉症の診断を受けた当初は、「治らない障がい」であるという事実に加え、「何をしてあげたらいいのかわからない」と、大変落ち込んだと言います。
しかし時間が経つうちに「自分なりに、自分ができることからやろう」と思えるようになり、現在は直樹さんとともに講演なども行われています。自閉症啓発月間である4月、直樹さんは、「自閉症であっても不幸だと思わない世の中であってほしい」、「僕は自閉症者も望まれて生まれてきたこの地球の一員だと思います」と語ってくれました。
Naoki and Miki travels around Japan, giving talks to families with autistic children Source: Miki Higashida
この機会に直樹さんが手掛けた数々の作品を手に取って読んでみてはいかがでしょうか? 作品の一覧はから。詳しくは東田直樹さんとお母さんの美紀さんの音声インタビューを下記からお聴きください。
Naoki hopes for an understanding society that will not pity you for being autistic Source: Miki Higashida
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「自閉症者の力になりたい」 自閉症の作家・東田直樹さん
SBS Japanese
05/04/202209:23
なおラジオ放送上の理由で、直樹さんが語られる部分は編集を加えており、実際の会話スピートよりも、かなり早くなっています。実際には一文字一文字を丁寧に指しながら、ゆっくりと思いを語ってくれました。
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