KEY POINTS:
- 1700万人以上のオーストラリア人が今年末の国民投票に参加するため登録済です
- 法案が議会を通過したことにより、具体的な投票日を確定するためのプロセスが始まります
- 日付は法案が議会を通過した日から2ヵ月~6ヵ月の間に実施される必要があります
「議会への声(Voice・声)」をめぐる法案が、上院を52票対19票で通過したことを受け、国民は今後6ヵ月以内に国民投票(レファランダム)を実施することになります。
国会は19日、国民投票実施に向けた最後のハードルを乗り越えたことにより、オーストラリア国民は、2017年の「ウルル声明」の重要な柱である「声」を憲法に明記するかどうかを決定することになります。
「議会への声」の賛成派は、「議会の仕事は終わった」と宣言しており、議論は今後、憲法改正を求める草の根の働きかけによって舵を切られることになります。
リンダ・バーニー先住オーストラリア人担当相は、今回の進展により、オーストラリアが憲法でオーストラリア先住民を認め、「偉大な国」をさらに偉大にすることに「一歩」近づいたと述べました。
「政治的な議論は終わりを告げ、(国民投票に向けて)始まります。今日、私たちはコミュニティー・レベルで国民的な会話を始めることができるのです」
「あまりにも長い間、オーストラリアの先住民は、非先住民のオーストラリア人よりも常に不利な状況に置かれてきました。これは壊れたシステムです。声はそれを修正する最良のチャンスです。なぜなら、現場の人々の声に耳を傾け、地元の人々と相談することで、より良い決断を下し、より良い結果を得ることができるからです」
労働党は、「声」は純粋な諮問機関であり、オーストラリア先住民が特に影響を受ける問題について議会や政府に助言する機会を与えるものだと強調しています。
しかし、この提案にはリスクが伴うとする批判もあれば、先住民に十分な権力を与えるものではないとする意見もあります。
約四半世紀ぶりとなる国民投票は、6月19日から2〜6ヵ月後の間に行われる予定ですが、アンソニー・アルバニージー首相は、年内に行われることをすでに発表しています。
「この一生に一度のチャンスは、私たちの偉大な国家をさらに高く引き上げるものです」

Independent Senator Lidia Thorpe reacts after the passing of the Voice to Parliament in the Senate chamber at Parliament House. Source: AAP / Lukas Coch
「これは、オーストラリア先住民のために何かをするのではなく、オーストラリア先住民とともに変化を起こす、より良い方法をとる機会なのです」と首相は述べています。
反対を表明する保守連合も法案を可決
保守連合は「声」に反対していたにもかかわらず、19日の朝、法案を通過させました。
自由党のフロントベンチャー、ミカエリア・キャッシュ議員は、賛成票を投じればオーストラリアの憲法が「取り返しのつかないほど」変わってしまうと主張し、労働党は「分裂的」な組織がどのように機能するのかについて十分な詳細を提示しなかったと指摘しました。
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「国会への声」国民投票で問われる文言とは
「しかし、私たちはこの問題について国民が発言する権利を信じています」とキャッシュ氏は言います。
「これは未知のものであり、分裂を招くものであり、永久的なものです。ボイスがどのように機能するかわからないのであれば、私の謙虚な意見としては、ノーに投票することです」
ワルピリ族/ケルト系の女性であるジャシンタ・プライス影の先住オーストラリア人担当相は、国民投票の後に議会に詳細を詰めさせることは、法的リスクを伴うと主張しています。
「首相は、何の保証もないなか、白紙のチェックにサインして、危険な提案を憲法に永遠に刻むことを盲信しろというのです」
この法案に反対票を投じた保守連合のメンバーは、有権者に配布される正式な国民投票のパンフレットで反対派の意見を述べることができるようになります。
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豪憲法改正なるか、先住民が先頭に立った国民投票への長い道のり
グリーンズは「真に歴史的な日」を歓迎
グリーンズの先住オーストラリア人担当スポークスパーソンであるドリンダ・コックス氏は、「声」の前に「条約」と「真実」を出すという希望を妥協し、オーストラリアのファースト・ネーションズの人々にとって「真に歴史的な日」であると歓迎しました。
「議会の仕事は終わりました。今こそ、草の根の賛成キャンペーンが地域社会に出て、なぜこの国民投票が重要なのか、なぜ議会への発言権が重要なのかを全オーストラリア国民と共有するときです」

Ms Burney, seated left, was present for the debate. Source: AAP / Lukas Coch
「声」は先住民の主権を損なうものではないとコックス議員が強調すると、「声」で自由に選挙運動をするためにグリーンズを離党した無所属のリディア・ソープ議員が「証明しなさい!」と何度も遮る場面もありました。
リディア・ソープ、ボイスは 「フェイクで見せかけ」と非難
ダジャウルング、グンナイ、グンディットジマラ族出身のソープ上院議員は、法案が通過した月曜日について、「同化の日」と表現し、オーストラリア人に国民投票をボイコットするよう呼びかけています。
ソープ議員は、この法案を「とどめの一撃」と表現しているものの、国民投票でどちらに投票するかは、まだ明らかにしていません。
「私たちに何の権力も与えないというこの悲惨な案に、私は反対票を投じるつもりです」
「国民にパワーを与えないようなことには賛成できません。政権を握っている人が選んだものを支持することはできません」。

Minister for Indigenous Australians Linda Burney poses for a photo with 40 members of Jawun at Parliament House in Canberra. Source: AAP / Mick Tsikas
「ですから私はここに潜入し、騒ぎ立て、この場所に代表される白人至上主義を破壊するために来たのです」
「Gammin(ガミン)」と書かれたTシャツを着て議会に挑んだソープ議員は、
アボリジナルの拘束死に関するロイヤルコミッションの勧告を議会が実施するよう要求しました。

Independent senator Lidia Thorpe reacts during debate on the Voice to Parliament in the Senate chamber at Parliament House. Source: AAP / Lukas Coch
「ボイスが私たちの生活を解決してくれるという、美しく、心に響く話を耳にします。すべてを解決すると。しかしこの国民投票が終わるまでは何もすることができません。その間、子どもたちは刑務所で拷問を受けているのです」
労働党のフロントベンチャー、マラルンディリ・マッカーシー氏は、月曜日の議会で、オーストラリア国民に「より良い未来のために」賛成票を投じるよう促し、この声は先住民にとって「非常に大きな意味を持つ」と述べました。
「先住民は、オーストラリア人全員に手を差し伸べ、この国の歴史におけるこの時期を誇りに思い、お互いを高め合うことができるようにしようとしています」
ポーリン・ハンソンの発言、議論の基調について懸念
ワンネーション党のポーリン・ハンソン議員が、オーストラリア国民に「なぜ盗まれた世代(Stolen Generations)」が発生したのかを「尋ねる」よう促したことを受け、マッカーシー上院議員は、今後数ヵ月間の議論の基調について懸念していることを認めました。
マッカーシー議員は、オーストラリア国民に対し、議論を通じて「自分の良い面に耳を傾ける」よう促しています。
「私は、このような論評を聞くと、少し心配になります」とマッカーシー議員は述べています。

Senator McCarthy conceded concern over the tenor of the debate, just moments after Pauline Hanson's (pictured) comments. Source: AAP / Lukas Coch
「そうすることで、初めて国として、オーストラリア人として、より良い部分を見つけることができるのです」
ハンソン議員は以前、「盗まれた世代」の多くは、連れ去られなければ「生き延びることはできなかった」と主張していました。
「盗まれた世代がなぜ起こったのか、考えてみてください」
1997年に発表された『Bringing Them Home Report』では、先住民の子どもたちを家から連れ去ることは重大な人権侵害であり、連れ去られた子どもたちの子孫は、刑務所に入る可能性が高く、健康に問題があり、就職する可能性も低いとされています。
アルバニージー首相はハンソン氏のコメントを見ていないとするものの、その発言は彼女が過去に行ったものと一致していると述べ、「首相が答えるほどのことではない」と返答を避けました。
「私は、全面的に尊敬に値する議論を呼びかけるつもりです」
「人々がどう投票しようとも、擁護者は事実に忠実で、事実でないとわかっていることを言わないように最善を尽くすべきです」
「ボイスは構造的な変化をもたらす」(リンダ・バーニー氏)
国民投票は、いわゆるダブルマジョリティー(全体の過半数、州の大半での過半数)によって可決されますが、ノーザンテリトリーとACTの住民は後者にはカウントされません。
デイヴィッド・ポコック無所属議員は、ACTとノーザンテリトリーの住民は平等な投票権を持っていないと強調しています。
ポコック議員は、国民投票を「キャンベラの声」に仕立て上げようとする保守連合の試みを、「あからさまに事実と異なる」と評しています。
「これは、オーストラリアの歴史上、最も協議的なプロセスのひとつの結果です。壊れていないのであれば、直してはいけない。しかし、もし壊れているのであれば、直す必要があります。これは、修正する機会なのです」
オーストラリア人は今年後半、国民投票で、議会と連邦政府に恒久的な独立機関を設置する憲法改正を支持するかどうかを問われることになります。この諮問機関の設計と詳細は、国民投票が成功した場合、国会議員によって決定されることになります。
バーニー氏は、この提案は、アボリジナルとトレス海峡諸島民が経験する健康、社会経済、寿命の悪化に対処するために必要な回路ブレーカーになると確信していると述べています。
先週発表されたクロージング・ザ・ギャップ目標(健康、社会、ウェルビーイングの指標におけるオーストラリアの先住民族と非先住民族の間のギャップの追跡)の最新情報によると、19項目のうち4項目しか達成されていないことがわかりました。
「それは構造的な変化をもたらすものであり、格差是正のような問題のダイヤルを動かすものです」
「この原則は、そもそも非常に大きな道徳的権威を持っています。理念について考えてみてください。 独立した機関であり、議会だけでなく(連邦)政府にも独立した助言を与えるものです」
「説明責任を果し、バランスがよく、地域主導で、今ある構造や組織の中に存在するものです」。
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1999年以来の国民投票実施へ、オーストラリアの憲法を改正する唯一の方法
「官僚主義を排除すれば、格差を縮めることができる」
国民党のデビッド・リトルプラウド党首は昨年11月、同党が「議会への声」を反対するノー・キャンペーンを行うことを宣言しています。
リトルプラウド党首は当時、この提案が「純粋に格差を縮める」とは思えないと述べていました。
リトルプラウド党首は今でも憲法に「議会への声」は必要ないと考えています。
「政府は、この問題(格差是正)を解決しようと何十億ドルもつぎ込んできましたが、我々はそれを間違った方法で行ってきました」と、彼はABCラジオの取材で語りました。
「平等の意図は常にありましたが、問題はその実行です」
「我々は失敗したのです。官僚主義を排除すれば、格差を縮めることができるのです」。
リトルプラウド党首は、必要なのはコミュニティーレベルでの解決策が含まれることだと述べています。
「官僚をキャンベラから追い出し、タウンホールやキャンプファイヤーで長老たちの話を聞くことです。地域コミュニティの長老たちが関与し、力を与える必要があります」
火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語オーディオ!
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