東京パラ開会式DJ、ファッション・ジャーナリスト 徳永啓太さん

Tokyo 2020 Paralympic Opening ceremony DJ

DJ Keita Tokunaga at the Tokyo 2020 Paralympic Games on 24 August. Source: Lintao Zhang/Getty Images

選手入場の際のDJを担当した徳永啓太さん。「主役はパラリンピアン」と、あえて開会式ではプロフィールを公開しませんでしたが、ネット上では「彼は誰?」と大きな話題を呼びました。


8月24日に東京・国立競技場で行われた東京2020パラリンピック開会式。そのコンセプトは「WE HAVE WINGS(私たちには翼がある)」。

逆風に立ち向かい、翼を広げるのは選手だけでなく、開会式に参加したすべての演出者、そして関係者でもあります。選手入場の際にDJを担当した徳永啓太さんもそのひとり。

「各国のパラリンピアンが主役の時間」、「そこで紹介されるのは不本意であり、裏方に徹する」という強い思いから、開会式ではあえて自身のプロフィールを伏せるよう関係者に伝えていたと言います。
Wheelchair DJ Tokyo Paralympics
Keita Tokunaga has been DJ-ing for the past few years, notably with NPO Organization, Medical and Welfare Entertainment, Ubdobe Source: Keita Tokunaga
しかし世界に中継された開会式の映像に、時折、数秒間であるも、その姿が映し出され、ネット上では、「彼は誰?」「開会式の曲マジかっこいい」「何でテロップでないの?」と大変な話題を呼びました。

「映ることが目的ではなかったので…こんなに自分の名前が検索されるとは思ってもいなかった」と、今でも状況を飲み込めないでいると語る徳永さん。

先天性脳性麻痺により、幼少期の頃から車椅子を使用する徳永さんが本格的にDJを始めたのは数年前の頃。

パラリンピックの開会式に出演した車椅子ダンサー、かんばらけんたさんと、「何か一緒にやりたい」という思いから、音楽作りをはじめ、福祉団体Ubdobe(ウブドべ)のイベントでDJとしてのオファーをもらったことで「やってみよう」と踏み切ったと話します。
徳永さんの活動はDJだけにとどまらず、ファッションジャーナリストやモデルと、多方面に広がります。

ファッションショーや展示会に足を運び、インタビューや執筆活動を行っているほか、インスタグラムアカウントを通じて、車椅子利用者が「これが自分のファッションなんだ!と自信を持ってタグ付けられる場」を設けています。

ファッションに目覚めたのは20歳の頃。

「日本のファッションが世界と比べておかしい」ということに衝撃を受け、「でもおかしくても、自分が満足できればそれで良いという関連性を心地よく思えた」、「ルールに縛られない領域、僕が見つけた唯一の自由」と話します。
Wheelchair DJ Tokyo Paralympics
Keita is also a fashion journalist and model. For Keita, fashion is one "freedom" which he has discovered. Source: Keita Tokunaga
「身体に障がいを持っているので、できないことが多いけれど、ファッションは裸以外なんでもいいんです」

パラリンピック開催への思い

 オリンピック、パラリンピックの開催が決まったときから、日本の社会が「多様性」を謳い始めたことに戸惑いを感じたという徳永さん。

「僕の中で当たり前であった多様性について、社会がいっきに言い出したことに違和感を感じました」

そこで、「多様性がなにか」ということを再確認するため、さまざまな身体や環境から独自の価値観を持ち人生を歩んできた人を取材するなどを行ってきた徳永さんは、その活動を通じて「(オリンピック、パラリンピックが)終わったら普通の生活に戻ってしまうのではないか、一過性で終わってはいけない、と危惧するようになった」と話します。

しかし、今世界が置かれているパンデミックにより、その気持は「当初より薄れている」「他人のことに関与できない状況ではないと捉えている」と続けます。

「社会がバイタリティを持ち始めてから次のステップを考たいと思っています」
Tokyo 2020 Paralympic DJ Keita Tokunaga
Keita felt uncomfortable when society was suddenly talking about diversity - "to me that was normal" Source: Keita Tokunaga
今後はファッション業界で重要な人物になれるよう、活動を行いたいと話す徳永さん。

「自分が目立ちたいというのではなく、こういう人がいるよ、ということを知ってもらうのが重要」

そうすることで同じ状況の人は「気分が楽になるんです」

「僕が幼少期のとき、ファッション雑誌には、車椅子の人はひとりもいませんでした」。

「自分当ての情報ではなく、参考にもならなかった」

徳永さんは自身の活動が、同じ車椅子利用者や脳性麻痺の人に、「同じようなことができる」という活力になり、次のスッテプへ進むための「踏み台」になることを願っています。
LISTEN TO
'Fashion has no rules': Paralympic DJ and fashionista finds internet fame amid Japanese games image

東京パラ開会式DJ、ファッション・ジャーナリスト 徳永啓太さん

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31/08/202113:17
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