1948年、ロンドン郊外のストーク・マデビル病院内で開かれたアーチェリー大会が起源であるパラリンピック。当初は第二次世界大戦で負傷した兵士の治療と社会復帰を目的に、この病院にちなんで、ストーク・マンデビル大会と呼ばれていました。
オリンピックとあわせてストーク・マンデビル大会が行われるようになったのは、1960年のローマ大会。続いた1964年の東京大会では、日本国内におけるこの大会の認知度が低かったことから、「対麻痺者(Paraplegia)のオリンピック」という発想から「パラリンピック」という愛称が生まれました。現在パラリンピックは、「オリンピックと平行(parallel)して行われる大会」として解釈されていますが、それが正式な名称となったのは、東京大会から24年が経った、1988年のソウル大会でした。
The Italian team at the Olympic village before the start of the first international Paralympic Games, Rome, 16th September 1960. Source: Keystone/Hulton Archive/Getty Images
またこのソウル大会では、オーストラリアから派遣された4人の義肢装具士によるある行動により、パラリンピックには欠かすことができないサービスが誕生しました。ドイツに本社を持つ総合医療福祉機器メーカー、オットーボックの代表として、その商品をブースで展示していたところ、次々と選手たちが修理の助けを求めてやってきました。即席のワークショップを設置して修理をするなか、パラリンピックを開催する上で修理サービスセンターの必要性を実感したオットーボックは、以降、夏季・冬季パラリンピックのサポーターとして、無償で修理サービスを提供してきました。
Ottobock has been proactively supporting Paralympic Games sine 1988 Seoul Games. Source: Ottobock Japan
東京2020では、23ヵ国から、100人の技術者が招集され、日々修理やメイテナンスに努めます。日本から選抜された14人の技術者の一人である、高橋俊潤さんは、2016年のリオ大会、2018年の平昌冬季大会でも修理を手掛けた義肢装具士です。
パラリンピックの修理センターでは、車いすなどの競技用機器だけでなく、選手村で使用する日常用機器の修理やメンテナンスも行うという高橋さん。この修理センターでは、選手の出身国や利用している機器のブランド問わず、すべての選手に無償で修理とメインテナンスを行っています。4000人ほどの選手が参加した前回のリオ大会では、2400回の修理やメイテナンスが行われており、その規模の大きさ、重要性が伺えます。
Prosthetist Shunjun Takahashi, Tokyo 2020 Paralympics Source: Ottobock Japan
夏季大会は特に忙しく、実際に修理を手掛けた選手の試合でさえも、観戦することはほとんどないと語ります。
激しいぶつかり合いから生じる車いすのダメージから、義肢の微調整まで、22言語で対応するサービスセンターは選手にとっては心強い存在です。
東京大会では開催国を代表するいち技術者として「知恵を出し合い、問題を解決していく」という任務をしっかりと果たしたいと語る高橋さん。「日本では障がい者と言われるのは7%、WHO(世界保健機関)が出している統計では、全世界では10%といわれるなか、パラリンピックに参加できるのは4000人ほどです」
Inside the Tokyo Paralympics technical repair and service centre. Source: Ottobock
この4000人が輝く舞台を通して、「障がいを持つということはどういうことかを考えられるきっかけになってほしい」と高橋さんは語ります。
「身近にいるであろう障害者に目を向けられる社会になる、そんなきっけかけになってほしいです」
東京2020パラリンピック大会は、来週火曜日、8月24日に開幕し、9月5日まで、繰り広げられます。
オーストラリアからは179人の選手が参加し、今回パラリンピックデビューを果たす、テコンドーやバドミントンを含む22種目の競技中、18競技に参加する予定です。
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「障がいを持つということ」を考えるきっかけになってほしい 義肢装具士 高橋俊潤さん(東京パラ)
SBS Japanese
17/08/202111:42
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