温和で人懐こく、ずんぐりむっくりした可愛らしい体型から、大変人気なオーストラリアの固有種、ウォンバット。
しかし近年、生息地の消失と、「疥癬」という病気により、ウォンバットの生存に深刻な問題が生じているのはご存知でしょうか?
クイーンズランド州サンシャインコースト大学で、ウォンバットに疥癬を引き起こすビゼンダニについて研究をしている高野光太郎さんによると、タスマニア州のナラワンタプ国立公園では、2010年頃から発生したと言われる疥癬のアウトブレイクから、地域に生息していたウォンバットの90%以上が犠牲になったことが分かっています。
疥癬は現在までに人間を含め、100種類以上の哺乳類で確認されていますが、ウォンバットが暮らす巣穴の環境に加え、巣穴を共有するという習性によって、ウォンバットの間で疥癬が広がっていると考えられています。
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Wombat suffering mange, a parasitic skin infestation Source: Kotaro Takano
その中でも一番大きな被害を受けているのが、ヒメウォンバット(Bare-nosed Wombat)です。
疥癬は治療をしない限り進行し、最終的には苦しみながら死をまねくほか、地域に生息する他の個体数にも感染を広げてしまいます。
現在はウォバット保護のボランティアや獣医、研究者などが中心となって、治療薬を投与していますが、現在政府によって唯一認可されている治療薬は、その効果が1週間であるため、宿主なしで2-3週間は生き延びるとされるビゼンダニの撲滅に繋がらないのが現状です。
高野さんは、ビゼンダニが治療薬に対する抗体を獲得しているのではないかという説を現在研究しています。
昔から動物好だったという高野さんは、高校卒業後の2012年に来豪し、タスマニア大学の動物学を専攻。
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Although sarcoptic mange is treatable, the need for repeated administration makes controlling the disease in the wild very challenging Source: Kotaro Takano
ウォンバットとの出会いは、「試験から逃れたい」という思いからの「偶然」だったと言います。
大学3年生の頃、試験の代わりにリサーチプロジェクトに携わることで単位が取れるということを知り、はじめたのがウォンバッドの巣穴の調査でした。
その後は大学院に進学し、卒業後はサンシャインコースト大学のPhDキャンディデートとして、引き続きウォンバットの研究を続けています。
日本ではなかなか見られない、ウォンバットのユニークな習性に魅了されたという高野さん。
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Source: Kotaro Takano
今後も自身の研究がウォンバットをはじめ、他の動物の保全に貢献していることをより実感できるよう、「ひとつ一つ身の回りのことを丁寧に全力でやっていきたい」と話します。
高野さんのフルインタビューは下記の音声からどうぞ。ウォンバットが四角い糞をする理由についても、教えてもらいました。
LISTEN TO
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動物の保全に貢献したい ウォンバット研究者 高野光太郎さん
SBS Japanese
19/04/202210:33
火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語ラジオ!