2015年、ビクトリア州のフリーマーケット(蚤の市)で、300枚に上る日本のモノクロ写真、さらには手紙やはがきなどが発見されました。
写真は1930年頃から60年にかけて撮影された、日本で撮られた日本人の写真だと考えられます。写真を見つけたのは、オーストラリア在住のアーティスト、金森マユさんで、ビクトリア州のデイルズフォードをホリデーで訪れていた際に立ち寄ったフリーマーケットで偶然見つけました。
Photographer unknown. This image may be subject to copyright. Source: Untitled Showa
ビニール袋に詰められた写真を手にとった金森さんは、ひと目で写真が日本人のものであると確信。このような写真が売られていることに疑問を持ちつつも、一袋購入し、宿泊していたモーテルで、その中身をじっくりと探ってみました。誰かの大切な家族写真であることは明らかであり、写真を「返さなければならない」という思いから翌日、マーケットに戻り、同じように写真が詰められていた他の袋もすべて購入。「袋をわけてはいけないと感じたんです」。
Photographer unknown. The image maybe subject to copyright. Source: Untitled Showa
フリーマーケットの店主から得た情報は、これらの写真が「ジーロングの故人の家から出てきた」ということで、その他の情報も遺品も入手することはできませんでした。
しかしアーティストとして活動され、「オーストラリアでの日本人・日系人の体験」をテーマにした作品を多く手掛ける金森さんの手に、これらの写真が渡ったのは、もはや運命だったと言っても過言でありません。
発見から5年が経った、昨年、コロナ禍で予定されていたプロジェクトやイベントが延期・キャンセルされたことを受け、棚の上にしまってあったこれらの写真を思い出したという金森さん。しかし、この5年間、「写真をどうにかしなければならない」という思いは常にあったと語ります。
フリーマーケットで古い写真が売られていることに対して疑問を感じて購入した以上、「責任がある」と述べる一方で、写真が売られているからこそ、「一度なくなってしまった写真が欲しい人のところへ戻る、または新たな命がふきこまれる、ひとつの窓口になる」と言う金森さん。
オーストラリア在住のウェブデザイナー、村岡稚恵さんとともに作成した、では、フリーマーケットで発見された写真や資料を一覧することができ、それらについて情報を付け加えることもできます。プロジェクト「Untitled Showa」は、結末がわからない、発展型プロジェクト。それはウェブサイトを訪れる人、それを発信する人、関わるすべての人が写真の新たな意味やストーリーを見出すプロジェクトでもあります。
Untitled Showa Project team, from left to right: Chie Muraoka, Sandy Edwards, Mayu Kanamori. Source: Hideaki Kobayashi
「写真を返そう言う善意が幸せな結末に向かってくれる」ことを心から願っていると語ります。日豪で「歴史をひもとく」プロジェクト、「Untitled Showa」は 2021年、オーストラリア政府の助成プログラム「豪日交流基金」の支援を受け、オーストラリアと日本での展示会やワークショップを含む活動が予定されています。
Photographer unknown. The image maybe subject to copyright. Source: Untitled Showa
シドニーでは4月13日から5月30日まで、ブロードウェイのセントラルパークモール内、107 Presents Level Up で展示会が開催されるほか、4月15日にはお披露目会、4月20日と5月4日にはワークショップも開催予定です。
さらには今年7月にはジローングで、9月頃には京都での展示会も予定されています。
LISTEN TO
VIC州の蚤の市で発見された300枚に上る日本の古い写真 日豪で「歴史をひもとく」プロジェクト、Untitled Showa
SBS Japanese
06/04/202112:56
火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語ラジオ!