オーストラリアの大自然を楽しむ際のマナーと心がけ

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Albany pitcher plant Credit: Sophie Xiang

オーストラリアには多種多様な固有植物や野生動物が生息しています。これらを探索に出かける場合、マナーと心がけが必要です。


Key Points
  • 季節ごとの天候やブッシュファイヤーの情報を含めた計画を立て、安全に移動しましょう。
  • 指定された道やトレイルを歩き、植物や環境を傷つけないようにしましょう。
  • 野生の花や植物、動物は持ち帰らないように。
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オーストラリアの大自然を楽しむ際のマナーと心がけ

SBS Japanese

10:29

野生の植物を初めて見に行く人も、アウトバックに慣れた人も、ブッシュの中で敬意をもって行動することは、オーストラリアの貴重な固有植物や野生動物を守るためにとても大切です。

敬意ある行動とは、決められた道路やトラックを歩くこと、標識や案内に従うこと、ごみを捨てたり、環境を壊したりしないこと、そして固有の植物や動物を持ち帰らないことなどが含まれます。

テリー・ダンハムさんは、西オーストラリア州南西部のアルバニー出身の科学者で、固有種である蘭の研究を行っています。

子どものころからこの地域の自然を探索してきたダンハムさんは、長年にわたってその豊かな生態系と向き合ってきました。

「西オーストラリア州にこれほど多様な植物が存在することに、いつも驚かされます。この南西部の地域は、世界的にも有数の生物多様性ホットスポットとして知られています。1年を通して野生の花々を楽しめるのは、本当に恵まれたことです。」
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Bushwalkers on the Ravensthorpe Range Credit: Terry Dunham
オーストラリアのブッシュには多種多様な動植物が生息しており、その中には絶滅の危機にある種も含まれています。

しかしダンハムさんは、すべての在来植物が“特別な存在”であり、生態系に欠かせないものとして大切にすべきだと語ります。

「ひとつの種が絶滅すると、その影響は昆虫、特に在来のミツバチから、鳥類、小型・大型の動物にまで及びます。これらの変化は長い時間をかけて進行するため、私たちは短期的な楽しみがもたらす長期的な影響にも注意を払う必要があります。美しいネイティブのブッシュを訪れ、植物を楽しめるのは、権利ではなく特権なのです。」

ジョニー・コビーさんは、南オーストラリア州南西のワーダンディ・ヌンガーの土地で暮らすヤンクニチャチャラとアランダ族の男性で、ナショナルパークのレンジャーとして働いています。

「国立公園や自然の中では、どんなものと出会えるか分かりません。それが、こうした場所を探検する魅力なんです。」

またダンハムさんは、に自分の行動に気を配ることで、こうした特別な場所を今だけでなく将来の世代にも受け継いでいくことができると話します。
決められた道を歩くこと、ごみを持ち帰ること、訪れた場所を元のままにして立ち去ること。こうした行動は、訪問者の皆さんに守っていただきたい大切なマナーの例です。
Jonnie Cobby
環境によっては非常に繊細で壊れやすいため、訪れたり探索したりする際には、その地域の自然や文化的な価値を尊重することが大切です。

「その土地の伝統的所有者や歴史に文化的な配慮を持つことは、訪れる人の理解を深め、その土地とのつながりを感じる手助けにもなるでしょう。」
中国出身で、現在はパースに暮らす写真家、ソフィー・シアンさんは、スマートフォンを使ったワイルドフラワー撮影の講師を務めています。

「ブッシュを歩くのは冒険のようです。レンズを通して植物の美しいライフサイクルを捉えることが、私のパッションです。オーストラリアの自然を撮影するのが大好きですが、他の訪問者がごみを捨てたり、植物や木を傷つけたりしているのを見ると、悲しくなります。」

環境を傷つけることなく、素晴らしい写真は十分に撮れると、シアンさんは説明します。

「ハイキングや探索をする際は、植物を傷つけないよう、必ず決められた道から外れないようにしましょう。環境を壊したり、他の人の体験を台無しにしたりしなくても、SNSに載せたくなるような完璧な写真は撮れます。また、野生の花は摘まないでください。オーストラリアでは違法です。蘭を掘り起こしたり持ち帰ったりするのもやめましょう。適した環境がなければ生き延びることができず、さらにトカゲなど在来の野生動物のすみかを守ることもできなくなります。」
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Originally from China, photographer Sophie Xiang now lives in Perth and teaches wildflower phone photography.
国立公園のレンジャーとして働くジョニー・コビーさんは、一部の訪問者の行動が環境に与える悪影響を何度も目の当たりにしてきました。
立ち入り禁止区域に四輪駆動車で入るような無謀な行為は、植生の破壊や土壌の踏み固め、さらには雑草や病害の拡散といった深刻な悪影響を及ぼします。また、完璧な写真を撮るために指定された道から外れるという、一見無害に思える行動でも、知らないうちに希少で繊細な植物を踏みつけてしまう恐れがあります。
Jonnie Cobby
国立公園や自然保護区で、決められた場所以外で薪を集めると、そこに暮らす野生の花や動物たちのすみかに悪影響を与えてしまうおそれがあります。また、オーストラリアの国立公園や自然保護区内から、野生の花や植物、動物を持ち出すことは法律で禁止されています。
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Queen of Sheba orchid. Credit: Terry Dunham
オーストラリアでは、在来の植物や動物は法律で保護されており、これらを持ち出さないことが保全活動や地域環境を守るうえで非常に重要だと、コビーさんは話します。

探索する地域によっても異なりますが、ダンハムさんによると、場所によっては植物の病気や病原体が存在し、靴や道具、車両などを通じて広がることがあるといいます。

「たとえば、西オーストラリア州南西部には、フィトフトラ菌という破壊的な菌が存在し、自然環境に深刻な脅威をもたらしています。ハイキングブーツや装備に付着した有機物はブラシなどでしっかり落とし、可能な限り指定された道路や小道を通るようにしましょう。」

また雑草の種子も靴や衣服を通じて運ばれる可能性があるため、その場を離れる前に靴や衣服を確認し、車のタイヤや車体の下に泥がついていないかもチェックすることが大切です。
環境に配慮した行動を取ることで、オーストラリアの自然を守り、将来の世代もその美しさを楽しめるようにすることができます。

「これから先、こうした植物は深刻な環境の脅威にさらされるでしょう。だからこそ、どんなに小さなことでも、植物を守るためにできることに取り組む必要があります。」

「ブッシュでは、種や実、花、葉、樹皮、小枝、枝など、何ひとつ持ち帰らないでください。そうした行為は違法でです。もしすべての人が思い出として植物や枝を持ち帰れば、こうした繊細な環境では生息地そのものが失われてしまいます。また、写真を撮るために周囲の植物を押しのけたりするのも避けてください。足元に注意を払い、もちろん野生の花は摘まないようにしましょう。」
Jonnie Cobby
Jonnie Cobby, National Park Ranger.
国立公園やその他の観光スポットの訪問者向けの情報は、オンラインで簡単に入手することができます。

オーストラリアの自然を訪れる前に、だとコビーさんは話します。これには季節による道路の通行止めや山火事の警報など、緊急情報に注意を払うことも含まれます。

「地域によっては極端な暑さなどの気象条件が影響を及ぼすこともあります。訪れる前に、自分の安全を十分に考慮することが大切です。適切な服装や水分補給、通信手段の確保、長距離や人里離れた場所を訪れる際には登山届けを出すなど、さまざまな安全対策を講じてほしいと思います。」
「写真だけを持ち帰り、足跡だけを残す」。それは誰もが簡単に守れる、わかりやすいメッセージであると、コビーさんは説明します。

オーストラリアの自然を探索することは、特別な体験です。事前に計画を立て、訪れる環境への敬意を忘れずに。

「私たちのネイティブ・ブッシュランドや、国立公園、道路沿いの緑地、海沿い大地、そしてその他の人里離れた地域は色とりどりで探検するのに美しい場所です。こうした手つかずの自然の中を歩けることは、心を癒し、元気を与えてくれる貴重な体験であり、生涯感謝すべきことです。」

オーストラリア各地の国立公園に関する詳しい情報は、以下のウェブサイトをご覧ください:

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