オーストラリアの薬局の仕組みについて知ろう

Pharmacist with customer

Pharmacists dispense prescription medicine. Source: Getty / Tom Werner/Getty Images

オーストラリアでは、薬剤師が処方薬のお渡しや健康のアドバイスなど、地域の皆さんのお薬の安全や疾患予防のお手伝いを行います。


Key Points
  • 医師から処方箋を受け取ったら、薬局に行ってお薬を受け取ります。
  • さらに、薬剤師は血圧のモニタリングなど、一部の検診やワクチンの投与も行うこともできます。
  • 「ファーマスーティカル・ベネフィット・スキーム(PBS)」は、オーストラリアに住んでいてメディケアカードを有する人を対象に、一部の医薬品へのアクセスを支援する助成金制度です。
オーストラリアで病気になってしまった時、医師から処方箋が出されたら、次は近隣の薬局でお薬を処方してもらいます。

地域の薬剤師さんは処方薬の授与だけでなく、健康のアドバイスやヘルスケア商品の紹介を行ったりしてくれます。病気になってしまったときのために、オーストラリアの薬局の仕組みを理解しておきましょう。

メルボルンで薬剤師をしているレナ・マンソーさんは、オーストラリアとエジプトでの勤務経験があります。自身の経験から、オーストラリアと海外の薬局の違いをこう語ります。

「患者さんのバックグラウンドによって、医療システムへの認識が違っていたり知らないことがあったりします。例えば、処方箋には期限があることです。処方箋が発行されてから一般的に半年か一年ですが、薬によって変わってきます。」

オーストラリア国外の医師から以前処方されていたお薬を求めて薬局に来店する患者さんも多いんだそう。

「その場合、私達はオーストラリアの医師が発行した処方箋以外のお薬は出せないことを説明します。」とレナさんは教えてくれました。

処方薬

オーストラリアでは、登録医師のみが薬局で使う処方箋を発行できます。

「処方箋は、医師の手書きだったり、プリントだったり、携帯電話やeメールに直接届く電子処方箋だったりします。」パースでキャプテン・スターリング・ファーマシーを営むト厶・アンドリューさんはこう説明します。

e-script accessible via mobile phone
E-scripts are accessible on your phone Credit: Yong Hwee Goh

オーストラリアでは全ての処方箋に有効成分が表記されていて、販売名ではなく一般名 で認識しやくすなっています。

薬局によっては「先発医薬品」「後発医薬品」の両方を扱っていることがあります。「後発医薬品」または 「ジェネリック医薬品」とは、先発医薬品と同じ有効成分を含有し政府機関から承認を得たお薬のことです。

「薬局には処方薬の授与を行う処方箋受付があります。大体は専用のスペースになっていて看板が掲げてあります。」と、アンドリューさんが教えてくれました。

「薬剤師か処方箋受付のスタッフが、患者さんと情報を確認した上でお薬を処方します。この際に必要な情報は、住所や生年月日、メディケアの有無など簡単なものだけの場合や、特に小さいお子さんなど場合によっては、体重、過去に同じお薬を使ったことがあるか、先発、後発医薬品のどちらが良いか、などの確認があります。」

その後、薬剤師によって正しい薬が正しい量、正しい患者に処方されているかが確認がされ、お薬が準備されます。

大体の場合、処方薬のお渡しにかかる時間は5分ほどです。
ただ、今まで使ったことないお薬のお渡しや、新規の患者さんの場合、常連の患者さんが普段から使っているお薬を処方するより少し時間がかかります。

医薬品の区分

オーストラリアでは全ての医薬品が「毒物」に分類され、また安全性に基づいて「スケジュール」と呼ばれる区分が定められています。州によって区分ごとの薬品の取り扱いが違う事もあるため注意が必要です。

「"アンスケジュールド"に分類される医薬品はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなど、薬局以外でも販売されています。"スケジュール2"は薬局販売医薬品”で薬局のみで販売ができる医薬品ですが、処方箋は必要ありません。ウェスタン・オーストラリアを除外したほとんどの州では、薬剤師の監修もと個人が自ら選んで買うことができます。」と、パースで薬剤師として働くヨン・フィ・ゴーさんは説明します。

「"スケジュール3"の医薬品は処方箋は不要ですが、副作用や用法を間違えてしまうなどリスクが高くなるため、薬剤師による説明が必要となります。例えば、眠気がでやすい強力な抗ヒスタミン剤、プソイドエフェドリンを含有するお薬や、喘息のお薬などです。"スケジュール4"は"処方箋医薬品"となり、処方箋がないと販売や授与ができません。」

オーストラリアでは"ファーマスーティカル・ベネフィット・スキーム(PBS)"と呼ばれる一部の医薬品へのアクセスを支援するための助成金制度があります。この制度を利用するためにはオーストラリアに住んでいて、メディケアカードを持っている必要があります。

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Pharmacist Lena Mansour - Image supplied. Pharmacist Tom Andrew – Image supplied. Pharmacist Yong Hwee Goh - Image supplied.

「PBSは薬品ごとの患者さんの自己負担額に上限を設けるものです。負担額は患者さんの状況によってことなります。」と説明するのはアンドリューさん。

「コンセッションカードをお持ちの患者さんの場合、PBS制度に含まれたお薬一点が最大で$7.70になります。通常1~2ヶ月分が一点とカウントされます。一般の患者さんでは、同じ量が最大$31.60 に設定されています。これにより、都心部の薬局と地方の薬局で医薬品の値段を同等に維持出来るようになっています。」

またオーストラリアは、海外のいくつかの国々と相互医療協定を結んでいるため、メディケアに加入していない患者さんでもPBSのレートで医薬品を購入できる事があります。

PBSに含まれていないお薬もあります。
「PBSに含まれない医薬品の処方は"プライベート・スクリプト"と呼ばれます。プライベート・スクリプトはメディケアの範囲外になるので、価格は薬局によって変わります。メディケアの助成制度には含まれていないものでも、民間医療保険に入っている場合そちらでカバーされる事が多いです。」とアンドリューさんは話します。

Pharmacists offer healthcare services and products
Pharmacists offer a large range of healthcare services and products. Credit: Yong Hwee Goh

処方薬のお渡しだけではありません

薬剤師さんは、その他様々なヘルスケア・サービスを行っています。

「薬剤師は患者さんの健康の窓口として、風邪、アレルギー、頭痛やアトピー、ニキビ、真菌感染を初めとする、様々な体の不調の診断や治療のアドバイスを行うことができます。」ヨン・フィさんは説明します。

「薬剤師は、かかりつけ医の紹介状があれば”ホーム・メディスン・レビュー”というサービスも行っています。薬剤師が今お使いのお薬で問題点がないかなどを確認し、かかりつけ医とコミュニケーションを取ることで、お薬の管理を助けるものです。」

さらに薬剤師は、血糖値の測定や血圧のモニタリング、貧血、糖尿病のスクリーニングなど、一部の検診を行うこともできます。

州によってはクリニックに行かなくても、薬剤師によるコロナウイルスやインフルエンザなどのワクチンの投与 や、経口避妊薬など一部の「処方箋スケジュール薬品」に分類される医薬品の処方が可能です。

高血圧など、慢性的だったり、生涯に渡り療養が必要な疾患をお持ちの方は、かかりつけ医がリピートして使える処方箋を発行することがあります。

「リピートの表記がされている処方箋では、患者さんは同じお薬を処方箋に指定されている回数分、新しい処方箋なしに購入できます。この場合、薬剤師は処方箋にリピート専用のフォームを添付します。次回リピートでお薬を購入するには両方のドキュメントが必要になります。」と、ヨン・フィさんは話します。

取り扱いのある薬局が少ない医薬品や、特別な用法が指定されているお薬など、場合によってはアンドリューさんの薬局のように薬を調剤できる薬局もあります。
Pharmacy
Inside a compounding pharmacy Credit: Tom Andrew

「調合薬局では患者さんごとの必要に沿ったお薬を調合することができます。このようなお薬の中には、オーストラリアでは在庫切れ、または商品として存在しないなどの理由で手に入らないものや、お子さん向けのシロップ剤、 動物向けのペースト剤など形状が異なるものが含まれます。またお薬によっては、患者さんに適した容量を個別に調合しなければならないこともあります。」と、アンドリューさんは説明します。

薬剤師はヘルスケア・サービスの要

お近くの薬局に足を運び、在任する薬剤師さんと顔見知りになっておくことで、お子さんの体調不良で困ったときや自分の慢性的な疾患をマネージするときなど、ご自身やご家族の健康管理にとても役立ちます。

レナさんは地域の薬剤師としてのお仕事は、近隣の人々の毎日の生活のサポートができてとてもやりがいがあると話します。

「患者さんに、健康面のアドバイスや他の治療法の案内を通じて、より健やかなライフスタイルを選べるようサポートしています。また、ご高齢の患者さんのお薬の管理のお手伝いをしたり、体調を崩してしまった小さいお子さんとそのお母さんが、少しでもゆっくり眠れるようにアドバイスをしたりすることはとてもやりがいがあります。」

お住まいのエリアの薬局を探すには、こちらのリンクをご利用下さい。

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