強盗に遭ったら? オーストラリアの法律で守られる権利とは

Robber breaking in house

The key element in the robbery is that the victim is directly confronted or threatened during the commission of the crime. Credit: South_agency/Getty Images

オーストラリアでは、「強盗」は単なる窃盗とは異なり、法律で明確に定義され、厳格な罰則が科されています。このエピソードでは、強盗の法律的な意味や自分を守る方法、また被害に遭った際に受けられる支援について詳しく解説します。


Key Points
  • 強盗(Robbery)とは、暴行や脅迫を用いて他人の財物を奪う行為。
  • 窃盗(Theft)とは、他人の財物を同意なく、かつ暴行を伴わずに奪う行為。
  • 自己防衛として認められる力の行使は、脅威の程度に見合ったものでなければなりません。
自宅やビジネスが泥棒に入られたことがないなら、それはラッキーなことです。

鍵屋やセキュリティの専門家、そして長年オーストラリアに住んでいる人たちが口を揃えて言うのが、”Keeping thieves out is the name of the game” (泥棒を家に入れないことが最も大切)です。
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強盗に遭ったら? オーストラリアの法律で守られる権利とは

SBS Japanese

30/03/202509:54

オーストラリアの法律でいう「強盗」とは?

オーストラリアでは、「強盗」は単なる窃盗ではなく、法律上の明確な定義と罰則が定められています。

シドニーを拠点に活動する、刑事事件専門の弁護士、アレックス・カオ氏は、Robbery(強盗)について、「暴行や脅迫を用いて他人の財物を奪う行為」と説明します。

強盗のポイントは、被害者が実際に加害者に直面したり、脅迫されることです。

一方、Theft(窃盗)は州やテリトリーによって定義が異なりますが、一般的には他人の財物を無断で、かつ暴行を伴わずに奪う行為を指します。

強盗と窃盗の大きな違いは、窃盗には直接的な脅しや暴力が伴わない点です。

またカオ氏は、Burglary(侵入窃盗)について、次のように説明します。

「侵入窃盗は、犯罪を犯す目的で、家や店、倉庫などの建物や閉鎖された空間に入ることです。通常は窃盗が目的ですが、ときに器物損壊や暴行など、他の犯罪が関わることもあります。」
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Theft involves taking someone else's property without their consent and without using force. Source: iStockphoto / Михаил Руденко/Getty Images/iStockphoto

「機会を狙った犯行」

メルボルン在住のテジ・パネサーさんは、2023年に泥棒の被害に遭いました。幸い、家族は泥棒と顔を合わせることはありませんでしたが、それでも大きなショックを受けたことに変わりはありません。

「家のセキュリティーがしっかりしていたので、泥棒たちは正面玄関も裏口も開けられませんでした。しかし台所の窓から侵入することができたようです。そしておそらく最初に、セキュリティシステムを外し、台所のシンクに入れ、水につけたと思われます。」

パネサーさんは普段、貴重品を貸金庫に保管していると言います。しかし、結婚式やイベントに出席する際には、ジュエリーを家に持ち帰ることもあるそうです。

「機会を狙った犯行だったと思いますが、非常に巧妙な手口でした。警察によると、泥棒たちは私たちの寝室に直行し、タンスを開けてジュエリーが入った箱を持ち去ったそうです。」

被害は、彼と家族にとって精神的にも金銭的にも大きな負担となりました。

「一人で家にいるのが、皆とても怖いです。ですから、必ず家には一人以上いるようにしています。夜寝るときは寝室に鍵をかけています。当時もし家にいたら、暴行されていたのか、どんなことが起こっていたのかと思うとぞっとするからです。」
High Angle View of Two Robbers Robbing a Cash Till and Threatening a Shop Assistant with a Gun
The force you use to defend yourself from thieves must be proportionate to the threat. Credit: Flying Colours Ltd/Getty Images

自己防衛

強盗から自分の身や財物を守ることは大切で、つい自然に反応してしまうこともありますが、オーストラリアの法律において、自己防衛として認められる力の行使はどのようなものなのでしょうか。

刑事弁護士のアレックス・カオ氏によると、自己防衛に関する法律は州やテリトリーよって異なりますが、いくつかの基本原則は共通していると説明しています。

「自分や他の人を守るために、その防衛行為が必要だと感じる状況でなければなりません。また、行使する力が脅威に見合ったものであること、命の危険が差し迫った場合にのみ致命的な力を行使することが許されること、そして脅威がなくなった後に攻撃を続けてはいけないという点です。」

泥棒が自宅やビジネスに入った場合は、無理に対処せず、すぐに「000」で警察に連絡するよう、カオ氏は勧めています。

犯罪被害者への支援

強盗に遭うことはショックです。しかし、オーストラリアには被害者を支援する体制が整っています。

サラ・クイック氏は、南オーストラリア州を拠点とする、被害者支援の団体、のコミッショナーです。

クイック氏は、強盗被害者の長期的な症状や苦しみを軽減するために、適切な支援をすぐ受けることは重要だと説明します。

「通常、暴力犯罪の被害者は無料でカウンセリングを受けることができます。その方法は州によって異なることがありますが、ほとんどの場合、無料カウンセリングやカウンセリング費用の支援が提供されます。」

また精神的なショックだけでなく、経済的な影響、ときには収入自体にも影響を与えることがあります。

クイック氏によると、オーストラリアには財政的支援や補償制度がありますが、その内容はお住まいの州・テリトリーによって異なると言います。

一方、ほとんどの州やテリトリーでは物品の損失や損害に対して補償は行われていません。

「被害者は盗まれた物に対して補償を受けることはできません。補償は主に暴力犯罪で身体的または精神的な被害を受けた場合に適用されます。」
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Neighbourhood Watch Victoria is a community-led crime prevention organisation, and similar groups exist nationwide.

ステイ・セーフ

のCEO、バンビ・ゴードン氏は、「機会犯罪」を防ぐためのアドバイスを次のように説明します。

「犯行の機会を減らし、少しでも実行しにくくすることが重要です。例えば、家にいるときも玄関や裏口を必ずロックすること。家の周りの茂みは低く整えて、人が隠れられないようにすることも効果的です。ご近所同士で見守り合うことが、防犯につながります。」

ネイバーフッド・ウォッチ・ビクトリアは、コミュニティによって運営されている犯罪予防団体で、同様の団体は全国に存在します。

団体の主な目的は、住民同士が交流し、近隣住民を知り、疑わしい行動に目を光らせ、助け合うことで、社会的な結束を促進することです。

また同団体は、自宅やビジネス、車の安全性をチェックするためのも提供しています。

被害者の権利についてもっと知りたい方は、お住まいの地域の関連団体にお問い合わせください。
ACT 
Victim Support, Human Rights Commission 
  
(02) 6205 2222 
NSW  
Victim Services  
victimsservices.justice.nsw.gov.au 
Victim Access Line 1800 633 063  
Aboriginal Contact Line 1800 019 123  
NT 
Victims of Crime NT  
 
Qld  
Victim Assist Queensland  
 
1300 546 587 
SA  
Victims of Crime SA  
  
(08) 7322 7000 
Tas  
Victims Support Services  
 
1300 300 238  
Vic  
Victims of Crime  
 
1800 819 817  
WA  
Victim Support Services  
 
1800 818 988 or (08) 9425 28 50  
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